この事業は、日本学術振興会カイロ研究連絡センターの深見奈緒子センター長から声がかかり、文化庁から事業採択の上、一般社団法人日本建築まちづくり適正支援機構(以下 JCAABE)が受託実施した事業で、エジプトと日本との連携によって行われた。おりしもコロナ感染問題があり、現地訪問ができずオンラインでのワークショップや研修会となったが、オンラインでの新たな支援や連携方法についても掘り下げられた状況である。

 保存まちづくりにおいて、住民がその地域の価値を理解して、自らの街は自らが作るという住民参加の視点が大切であるが、今回、カイロにおける以前からの活動を下地に、カイロ旧市街の建築物の詳細な現状調査と共に、JCAABEで推進している住民参加のワークショップや専門家のファシリテーション手法の実施、日本の事例紹介などの研修会が行われた。

 当事業の特徴として、カイロ旧市街におけるエリア、すなわちスーク・シラーハ通りと6つの歴史的建築物について、①エジプト建築家(専門家)のファシリテーションによる住民ワークショップを行った上で、利用保存を含めた更新案が作成され、②日本側からエジプト行政 NOUH 関係者へのオンラインレクチャーを通して情報が共有され、③エジプト建築家から行政関係者や住民に対して更新案のプレゼンテーションを行い、住民とオンラインで繋がった日本側専門家と意見交換するというデザインレビューが実施できたことである。

 建築やまちづくりにおいて、良質な、美しい、といった定性的な観点を取り入れるには、協議調整が大切とされているが、今回、住民ワークショップでの協議調整、オンラインレクチャーでの情報共有を経て、デザインレビュー(協議調整)が実施されたことは、現地における今後の住民参加の保存まちづくり活動への一助となると共に、日本においてもこの経験が役に立つと思われる。これからもフォローすると共に、何らかの形でサポートができればと願っている。

(JCAABE代表理事:連健夫)


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