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『心と対話する建築・家』(技法堂出版)連 健夫(R23)著について

R23 冨部 久


連(むらじ)の建築は、まず施主がどういう建築・家を望んでいるかの自由なイメージのコラージュから始まる。
このことは重要である。

最初からいきなり具体的な要望で始まると、それは自ずとこじんまりとした現実の羅列となることが多い。
それに引き換え、そういったコラージュから始めることにより、この建築・家はより広い世界を与えられることになる。
そうして得られたコラージュをもとに、彼の今までの経験から来る具体的な形状、さらには、想像力から来る新しいアイデアがそれに付与され、施主に最初の概念モデルが提示される。
それに呼応して、施主は同意したり、さらなる具体的な考えを述べたりして、互いの話し合いの中で、最終的な形が組み立てられていく。

本書がまさに『心と対話する建築・家』と題されている所以である。
こうして出来上がった建築物や家に対して、当然施主の満足度は高く、また、コラージュが表す深層心理のようなものまで表現されていることにより、住めば住むほど、使えば使うほど、心にしっくりと来るようになる。

イギリスで学び、また、日本に戻ってからも、様々な国で行ってきたワークショップなどにより、国際的な見地も兼ね備えた連の建築の原点、発展過程、そして現在を知る上で、建築に少しでも興味のある人間にとって、本書は非常に有益であると言える。