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心と対話する建築・家
―心理・デザインプロセス・コラージュ― 読後感

ノンフィクション作家 布施 克彦

建築は門外漢であり、さほど興味ある分野ではありませんが、本書のキーワードとなっているCOLLAGEとVERNACULARという言葉には、共感を覚えました。

私も物書きの端くれとして創造的な作業に関わっており、COLLAGEという言葉は知りませんでしたが、いつも同じようなことをしています。書こうとするテーマから思いつくキーワードや他者の種々の意見などをランダムに集め、そこから抽出されるコンセプトを基礎に、文章の構成を考えています。
VERNACULARという言葉も知りませんでしたが、いつも私が大切にしている概念です。グローバルスタンダードなどという言葉が蔓延している今こそ、大切なものです。

わたしは海外各地に住みカルチャーショックを覚える中で、その土地のVERNACULAR性の根源にいつも思いを巡らせてきました。私の場合、具体的にはその土地の風土と歴史を知ることが基本だと思っています。
それらの理解をベースにして、その土地の人たちの持つ価値観、文化、習慣、社会性との関連性を考えながら、異文化理解に努めてきました。
それから、施主の意見を広範に取り入れながらみんなで作業を完成させてゆく連さんのやり方は、リナックスやウィキペディアなどITの手法を連想させ、興味を覚えました。

いろいろ考えさせる、示唆に富んだ本だと思いました。